きっかけを待つ

この塾にはよく休む(休みがちだった)生徒がいます。

ちゃんと来たほうが成績が伸びるのにな、とは思っていましたが、休みの際はお母さんからちゃんと連絡が来ますし、お母さんも休むことで、塾の勉強が遅れることを認識しているならそれでいいか、と思っていました。

 

私はこちらが決めさせていただいた最低限のルールを守ってくれるなら、あとは自由にしてくれてけっこう、と考えています。好き勝手休んで、その分を振り替え授業をしてくれといわれたら困りますが、他の事情と塾を比較検討したうえで、塾に通う権利を放棄するのは別にかまいません。私だって、送り迎えの時間がもったいないと思って、それを理由に子供の習い事を休ませることはありますから。

 

 

私から見たら、そんな塾を十分に活用できていないと思う子がいる(いた)のですが、2月の学年末テストの3週間前に、少し変化を感じました。勉強する姿勢がいいのです。背筋が伸びている。いつもは丸まっているのに。

勉強している様子をみてもとても集中できていますし、それが1週間継続しました。ちょくちょく様子を伺い、力が着実についていることを確認し、私の心の中は「チャンス到来!」でした。あとは、うまくその子に「今のまま勉強していったら順位が上がる」その予感を持たせるだけです。それができたら今以上にターボがかかり、勝手に成績は伸びていきます。

 

「うまくいく予感」さえ持てば、人は動きます。動かざるを得ないのです。ただ、確実にそんな予感を持たせられる方法はありませんので、冷静に慎重に、そのロードマップを自分の中で作成し、それを実行しました。最後、これさえうまくいけばすべてがうまく機能すると考えていることがありますが、それが予想以上にうまくいき、よし、任務完了、あとはうまくいく、そう確信することができました。

 

そして、本当にその子はテストに向けてがむしゃらに勉強してくれました。すごい勉強量です。私が「もうテストまで寝なくていいよ。ずっと勉強してなさい。」と冗談でいうと「はい。僕、寝なくても大丈夫なんで。」とかえしてくれました。で、実際に睡眠時間は2、3時間で頑張ってくれていたようです。テスト週間中は塾の滞在時間はトップでした。

もちろん、これだけやれば、成績はバーンと跳ね上がります。すごい結果をもってきてくれました。

 

テストが終わってやる気がもとに戻るかと思いきや、不思議なことにそれが継続しています。「テスト終わったのに、なんでそんなに真面目に勉強してるの?」と聞いたら「なんだか勉強が楽しくなってきた」そういってくれました。今ではほとんど休むことはなくなり、それどころか、「家にいても暇だから」と1日に2回塾に来てくれたこともあります。人は変わるのですね。

 

 

で、この話で私の最大の疑問点、関心事は、「なんで学年末テストに限って、3週間前に勉強にまじめにむかえたのか」です。ここはこちらが働きかけたものではありません。こちらとしてはチャンスが転がり込んできたから、それを拾っただけ。

面談で本人に聞きましたが「それはわからない。」だそうです。私はずっとこの問いを考えてきて、いくつか仮説はたてられましたが、こちらが完全にコントロールできる要素は見つけられていません。

行動にむかわせた原因がよくわからないってところがとてもおもしろい。これからも私はこの点について考え続けていきます。

 

この子の変わるきっかけはどこかにないかなあと探し続けて、見つけられたときは入塾してから10か月がたっていました。また次どこからかチャンスがやってくるはずなので、じっくり待って、チャンスがきたら、しっかりつかむつもりです。