飛躍

From : 眞田

 

先週、とても驚くことがありました。

 

数か月前ある子(以下、X)がこの塾の体験授業を受けにきてくれました。授業の様子をみていて、この塾でやっていくのは厳しいだろうと思い、他の塾に通うことを提案させてもらいましたが、「どうしてもこの塾がいい」と主張してくれたので、そこまで言ってくれるなら、と思い入塾してもらいました。

 

私はこの塾に入ってもらうからには全員の成績を上げてあげたい、そう思っています(当たり前)。しかし、現実は厳しい。

特に、成績が極端に低い子は、そもそも小学校のときからの勉強ができていなかった子がほとんどで、小学校でわからないところが積み重なり、中学校でさらにわからないところが大きく積み重なっているので、すべてを氷解させ、理解させることは相当に困難なことです。

 

実際にXは、入塾しても全然理解が進まず、大きな苦しみの中でもがいていました。私が見ていても、その苦しみは伝わってきました。ただそれでも唯一の希望の光が、Xが勉強から逃げずに向かい続けていたことでした。これは勉強が苦手な子の中では珍しいです。多くの子は苦しみに耐えきれず逃げ出してしまいます。

 

私は頑張る人が好きです。成績が良いとか悪いとかそれは関係なく、今の自分をよりよくしようと頑張る人を応援したい、関わっていきたいと思っています。今がだめだったとしても、頑張ろうとするその心が、その姿勢が、これからの自分ををよくしていく希望の光であると私は思うのです。

 

次の単元に進むのか、今の単元にとどまるのか、最終的に決断しているのは私です。一応テストもして点数を出したりしますが、何点取ったら次、みたいな基準はありません。答案をみながら、間違えの質をみながら、解答者の顔を思い浮かべながら、完全なる私の主観で合否が決まります。95点で不合格の時もあるし、85点で合格の時もあるし、合否の基準は「よし、これならこの子は次に進んでいいだろう」と私が思うかどうかです。

となると、どうしても勉強が苦手な子は、消極的な合格が多くなってしまいます。私としてはできるようになるまで留まらせたいと思うのですが、時間が足りなくなってしまうため、わかっていなくても次の単元にいかせるために合格を出すことも出てきてしまいます。

 

Xは問題を解いても出来が良くなく、ほとんど消極的合格、すなわち次の単元に進ませるために、合格を出していました。

 

そして先週です。

またXのプリントを見ても、よくない。多少は改善してきてはいますが、教えたとおりのやり方がまだできていないのです。テストでは〇か×かなので、完璧でなければテストの点は上がっていきません。

「まだまだだけど、次の単元にいこう」と合格させようと思ったのですが、「いや、だめだ。ここで合格させたら何も得られることがない。よくなっている部分もあるのだから、ここを完璧にして定着させよう」という思いがなぜか出てきたのでした。

「解き方の形がまだまだできていない。形を完璧に自分のものにしてほしい。」という趣旨のことをコメントしてもう一度今の単元にとどまって勉強してもらうことにしました。

 

数日して、私は毎日のプリントのチェックをしていたら、とても綺麗な答案を見つけました。「これは高得点だなあ。○○君かな、○○ちゃんかな。」と思いながら丸つけていたら、案の定、そのテストは満点でした。100点と書こうと思って、名前をみたらびっくり、Xでした。

そのテストは難しく、100点をとった子はほかにいません。そんな難しいテストで唯一の満点がXとは、鳥肌が立ちました。

 

これからXはどうなっていくでしょうか。

まだまだ超えて行かなくてはいけない問題がたくさんあるので、正直、今回うまくいったからといって、これから順調に行くとは思いません。しばらくしたら今回マスターしたスキルを忘れてしまう可能性もあります。でも無理だとも言えない。Xが腐らず勉強に向かう姿勢と100点を取った時にみせた、はにかみながら嬉しそうな表情、そこに光があります。この塾はその希望の光を消さないようにしていかなくてはなりません。

 

6月に定期テストがあります。平均点はとれなかったとしても、少しでも順位が上がれば、Xは報われます。また次頑張ろうと思えるエネルギーが湧いてきます。

成績が上がってお母さんに褒められたらどんなに嬉しいことだろうか。

かなり重要なテストになります。頑張ろう。