娘からの手紙


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From:眞田

 

娘は3月に中学校を卒業しました。卒業式のときに手紙を渡されました。

 

手紙を見ると、

 

「偉大なる父へ」

 

から始まっていました。

私は日ごろから、父親は偉大なる存在であると刷り込もうと思って、一人称で「偉大なるお父さん」を使っています。

 

偉大なるお父さんはね、こうだと思うよ。

偉大なるお父さんが連れて行ってあげるよ。

 

こんな感じで使っています。「全然偉大じゃないし」とか突っ込まれるのですが、めげずに使い続けています。その教育の効果がありました。

 

そのお手紙の中には「私の周りの友達はみんなお父さんのことを嫌っているけど、私はお父さんを嫌いになったことがありません」と書いてありました。

 

それを見て、嬉しい気持ちは湧かず、どういう意図なんだろうなあ、と考えました。

 

というのも、私が娘のことを嫌いだった時期があるからです。自分のことを嫌いな人のことを好意的に思うのは難しいです。

親だから自分の子供を嫌ってはいけないとは理性ではわかっているのですが、どうしても好きにはなれませんでした。

 

娘は頭がよくありません。そのこと自体は別にいいのです。だってそれは親の責任だから。「頭が悪くて嫌い」と責めたところで、「あんたの遺伝子が悪いんでしょ。私だってあんたの遺伝子じゃなくて、もっと優秀な親の遺伝子がよかったわ」と言われて終わりです。それはこっちが謝るべきことです。

ただ、できないならできないなりに何とか頑張ろうとする姿勢を見たかった。しかし、全然見えなくて、それが私をいらつかせました。

 

親だから子供のことを好きでなければならない、とは思って、何度も何度も自分と対話したのですが、嫌いな感情を消すことができなくて、これならできるだけ関わらないようにして、距離を保った方がいいだろうとなりました。

 

そういえば、今は息子とは仲いいですが、息子のことも嫌いで受け入れられない、と思った時期がありました。でもそれは息子が幼い頃の話なので、息子は私から嫌われていたという記憶はないはずです。

小学校に上がってからも「お父さんは親だから義務感で仕方なくお前と付き合っているが、同級生だったら、お前とは絶対友達にならないからな」とよく脅して感情をぶつけていました。息子はその瞬間は嫌な思いをしたかもしれませんが、たいして気にしていなかったと思います。

 

息子の場合はめちゃくちゃ抱っこしたのが大きかったと思います。抱っこトータル時間日本選手権があったら、上位入賞するのではないだろうか。それくらい抱っこしていました。腹が立って「お前、むかつく。嫌い」と言っても、すぐに抱っこしてあげていたりしたので、嫌な感情はすぐに消えてしまっていたと思います。

二人は年子で、小さいうちは二人とも抱っこできましたが、すぐにどちらか一方しかできなくなります。

息子は、自己主張が強く、他人を思いやる気持ちはなかったので、僕が抱っこしてもらったら、次はお姉ちゃん、の考えはできませんでした。ひたすら、僕抱っこ、と主張してきます。駄々をこねる弟に娘は抱っこを譲ることが多くて、たまには私が「次はお姉ちゃんだよ」とはやっていたものの、次第に娘は抱っこをねだることはなくなりました。あのとき娘もたくさんたくさん抱っこしてあげていたらよかったなあと反省です。

 

娘も息子も、私の思い通りに動いてくれなかったことに、私はいらだっていたのです。

他人である以上、自分の思い通りになるわけがない、とは頭では理解しているつもりでした。でも、どうしても感情が出てしまうのです。2人には申し訳ないですが、この経験はいい感情コントロールの練習になりました。

 

 

それで、実際に娘に「手紙読んだよ。ありがとね。お父さんが自分のことを嫌っている時期があるのはわかっていたよね?さすがにそのときはお父さんのことを嫌いになったんじゃない?」と聞いてみました。

 

そしたら、「多少は嫌な気持ちはあったけど・・・でも、そんなに嫌に思ったことはない。友達はお父さんのことすごく嫌っているから、そこまではない」と言いました。本音かどうかわかりませんが・・・。とりあえず、私はいい親ではなかったことは間違いない。人としての器も小さくて最悪です。反省することばかりです。

 

 

他にも手紙の中には「迷惑ばかりでごめん」「これからも迷惑かけると思うけど」とあって、これも胸が締め付けられました。

私のできることは、迷惑かけられても、現実対処が適切にできて動じず、私にはお父さんがいるから大丈夫、と思ってもらえる存在になることです。なれるかどうかわからないですが、そこを目指してやっていきます。

 

まだまだ、おそらく、一緒に過ごしていく時間は長いでしょう。

未来のことはわからないし、もしかしたら、関係を切ってそれぞれの道を歩むことになるかもしれないけど、一緒にいられる限りは楽しくやっていきましょう、と思っています。