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From:眞田
「熔ける」
本屋さんでこのタイトルを目にした時、天才だ、と瞬間的に思いました。タイトルを考えたのが、井川さんなのか、編集者なのかわかりませんが、センスを感じる非常に素晴らしいタイトルです。タイトルで読みたいと思ったのは久しぶりでした。
著者の井川意高さんは今から10年くらい前にギャンブルで100億円すって、代表を務める大王製紙から100億借り入れて特別背任で逮捕された方です。(借入れた100億を返済したってのもすごい)
まさに我らがギャンブル中毒者たちのリーダー中のリーダー、トップオブトップ、クズ人間中のクズ人間、と言っても過言ではないと思います 笑。彼がどのようにして、どのような思考過程を辿って100億円も失うことになったのか、そこにとても興味がありました。
冒頭を読んでみて、私ごときが大変恐縮ですが、負けるべくして負けるというか、負ける人の思考をしてしまっているように思いました。
ギャンブル用語が紹介されていますが(これは一般的にギャンブラーの間で使われている言葉なのか、井川さん独自の言葉なのかはわかりません)、まずはこの「言葉」が気になりました。
【マジック・モーメント(魔法の時間)】
奇跡的な連続勝利が起きる時間
【揺らぎの法則】
さいころなどの出目は行きつ戻りつしながら勝ちの方向、または負けの方向へ揺らいでいくこと。
・バカラを支配するのは「揺らぎの法則」だという説は、私も皮膚感覚から正しいと感じている。
・「揺らぎの流れ」が変われば、必ず勝負の風向きはこちらの思う通りに動いてくれる。
こういった言葉が紹介されていて、この言葉を使って現象を捉えているとするなら危険なのではないかと思いました。
今は科学が発達しているので、雷が発生する理由は分かっています。
夏は晴天だったのに夕方から急激に入道雲が発達して、雷雨が発生することがあります。科学が発達していなかった昔は、雷様の仕業であると思っていた人もいるでしょう。親に「いい子にしていないと雷様が怒るよ」と言われて育った子は雷様が本当にいると感じるはずです。
「急に暗くなって、ゴロゴロ鳴り始めた・・・。そういえば、さっき、カタツムリを踏んで殺してしまった。雷様が怒っているに違いない」そう【皮膚感覚】で感じてしまうのです。
皮膚感覚で感じたからといって、それが本当に【ある】とは限りません。これはとても大切なことです。【ない】ものを【ある】と思い込んでいたら、成果は出ないですし、盲目的にそこにはまり込んでしまう可能性があります。
よく「あの子は私のことを嫌っている」って言ったりしますが、自分がそう感じていることは事実でしょうが、本当にあの子が自分を嫌っているかどうかはわからないです。あくまでも、自分がそう感じているだけ、が正しい事実認識になります。
私は、皮膚感覚は当てにならないので、できるだけ客観指標で判断したいと思っています。
話がややこしくなってきますが、マジックモーメントとは、奇跡的な連続勝利が起きる時間、のことであり、揺らぎの法則とは、さいころなどの出目は行きつ戻りつしながら勝ちの方向、または負けの方向へ揺らいでいくことである、と本書の通り定義づけたとします。
私はこれまで10万回は振っていないですが、数万回はサイコロを振って、確率事象とは何なのか、ランダムとは何なのか、自分なりに研究したことがあります。
その経験から言うと、その定義通りのマジックモーメントはあると思いますし、揺らぎの法則もあると思います。でも、「それで?」という感じ。
「息は吸ったら、吐くことになっているんですよ。息を吸って、吸って、吸って、ずっと吸い続けることはできず、必ず吐くことになります。これを呼吸の法則といいます」
と言ったところで、「うん・・・。えっと・・・それで?」となると思いますが、それと同じ感覚です。
言葉で現象を定義づけたとして、それが数式や統計的データなどで客観的に表すことによって、何かに活用できなければ、どうしようもありません。
確率事象ってそういうものだから。ランダムってそういうものだから。私はそう思っています。だからこの部分を解明しようとして頑張っても泥沼にはまることになると考えています。解明出来たらすごいですけどね。ノーベル賞ものです。でも解明できた人がいたとしても、それを公表しないのではないだろうか。独り占めした方がいいですから。
この「熔ける」は井川さんの懺悔が綴られた本ですが、読了してみて、「この人は、またギャンブルに手を出すだろう」と思いました。もう大王製紙からは離れていて、数百億円をギャンブルにつぎ込むことはできないでしょうが、可能な範囲でお金を掛けてギャンブルをすると思います。本の文字からも、一気に稼いだ時の興奮が伝わってきてしまうのです。本を書きながら、脳汁が溢れ出していた様子が伺えます。
全然抜けられないのがギャンブルの怖さです。ギャンブルだけでなく、たばこでもお酒でも薬物でも、中毒性の強いものから抜け出すのは困難です。
女の子も男の子も、将来結婚するとするときは、ギャンブルをするかしないかチェックをした方がいいだろうな、と改めて思いました。