私は中学(後半)、高校と勉強には比較的真面目に取り組んだほうだと思います。
でも私の本質は、勉強嫌い、遊ぶの大好きそんな人間です。
そんな人間がなぜ勉強に真面目に取り組むようになってのか、これにはある出来事が関係していました。
中学に入ると本格的なテストが課されます。そのテストの順位がだされるのだから、しっかりやらないと、とは思いながらも身体は動かず、毎回、それなりに勉強して、それなりの点数をとっていました。私にとってはテストでよい順位を取ることよりも、少ない勉強量でそこそこの順位を取り、部活が休みになるテスト週間をいかに有効活用するか、こちらのほうが重要だったのです。
中学2年生になりました。クラス替えが行われ、定期テスト順位が学年1位の子(以下A子)と同じクラスになりました。
A子はただ勉強できるだけではなく、人間的な魅力があり、とてもおもしろい子でしたので、ふざけたことをいいあったりしながら新しいクラスを楽しんでいました。
そして冬、
いつものように仲間たちと楽しく会話しているとき、ふと、「A子ってこの前のテストで1番だったな・・・もうすぐテストがあるから、いっちょあの鼻っ柱をおってやるか。」そんな思いがでてきました。
私「おい、A子! お前、俺をなめてるだろ!!」
A子「はは(笑) なによあんた、いきなり・・・(笑)」
私「次のテストではA子に勝ってやるからな。覚悟しておきなさい。」
A子「はいね♪楽しみにしてますわ」
そんな感じで、テストの点を勝負することになりました。
私はこの時になって初めて、本気で勉強しました。今までもしていたにはしていたのですが、パワーを出し切った勉強をしたのは初めてでした。
でも慣れないことはするものではないようで・・・テストを1週間前に控えて、風邪をひいてしまいました。
しかもインフルエンザ・・・
でも私はインフルなんかに負けてられない、と周りの反対を押し切って学校にいっていました。(絶対真似してはいけません。今思うととんでもないことをしたと思っています。)
なぜ体調が悪い中学校へ行ったかといいますと、テスト前の授業はとても大切で、先生がテストに出るところをポロっと口にすることがあるのですね。
直接「ここ出すからね~」ということもあれば、先生の口調、説明の様子から、おそらくここはテストに出るな、ということがわかったりします。
悪寒と全身の痛みがひどかったですが、それでもA子に勝ちたい一心で頑張っていました。
家に帰ってからも、横にはならず、ひたすら机に向かいます。頭はぼーっとしています。
勉強を続けていると、ふと尿意を催したので、フラフラしながらトイレに向かって、ジョボ~とおしっこをしました。熱が高くふわふわしていて状況がよく把握できないのですが、何か違和感を感じました。
あれ~何かおかしな感じがするな~・・・
・・・・・・・・・・・・
!!!!!!
おしっこが赤い!
私の身体からトマトジュースのような濁った赤色の尿が出ていました。こい黄色とかではなくて、完全に赤いです。
これは死ぬのかもしれない・・・でもこれを親にいって、お医者さんに連れて行かれ入院ってことになったらテストが受けられないから黙っておこう
この時私はテストに命をかける想いでした。
翌日の朝も血尿は続きます。しかし次第に赤みが薄れてきて、普通の色の尿になりました。
血尿って自然治癒するものでしょうか??
いまだに謎です。
そして何とか無事にテスト前には風邪は治り、万全とはいえないものの、これまでよりは良い状態でテストに臨むことができました。
手ごたえは・・・ある。
これまでより確実にできた。ただ、A子に勝つためには485点のライン、いや、場合によっては490点を超えたところでの攻防になることが予想され、かなり高い点をそろえなくてはならないので、一つのミスも許されません。そこが不安でした。
数日後テストが返ってき始めました。
私はA子と「せ~のっ!」で点数を見せ合っていました。
私の点はこれまでのテストの点に比べるとよいのですが、A子もよい点数です。国、数、英、社の4科目が返ってきた時点で私はA子に4点負けていました。
もうこの時点で勝負は決しているようなものです。残り1科目でA子から4点を逆転するのはほぼ不可能に感じられました。
もう勝つのは無理だな、ただ、次は自分の得意な理科だから、少しは詰められるかな、
そんな思いで最後の科目理科の「せ~のっ!」を迎えました。
「せ~のっ!」
私98点 A子93点
?
!!
え???これって勝った??僕の勝ち??!!!!!!!
「やったー、勝ったー!!」
私は授業中にも関わらず叫んでしまいました。
A子が93点とは低い点数ですが、それでも私の勝ちは勝ちです。
「どうだ、A子、参ったか?」
「よくがんばったね。あんたがここまでやるとは思わなかったよ。参った」
その日はA子に勝ったこと、そしてこれまでで最高の順位が取れるであろうこと、この2つのことで、ルンルン気分で家に帰りました。
ただ、これで話は終わりません。ここから後半戦です(笑)
次の日も私は心軽く学校へ向かいます。
馬鹿な私はこの日もA子のところへいって「勝ったー」 「どうだ思い知ったか」「おぬしもまだまだじゃの~」などと減らず口を叩いています。
こういうのは嫌われるので一番やってはいけないことに一つですね。
当時はとても幼かったということで。。。
でもA子はいやな顔一つしません。「うんうん、すごい」「よくやったね」そういう言葉ばかりをかけてくれます。
・・・
数日後、
私はまだ「勝った~」といっています(本当に恥ずかしい)
お昼、先生と一緒に給食を食べながら、「せんせ!とうとうA子に勝ったよ!」と話していると、
「あの~・・・、A子には口止めされてるんだけど、、、、実はA子は数学に採点ミスがあって2点上がったんだよ・・・」
2点上がった?
それが何を意味しているのか、私は一瞬で悟りました。
私は言葉を失い、何も考えられなくなりました。食欲も一気に失せ、「もういい、給食を片付けよう」そう思って食器を片づけていると、手が牛乳瓶にあたって
ガッシャーン
私の足元にガラス片が飛び散りました。みじめでした。
かっこ悪い・・・何を浮かれていたんだ俺は・・・
もう涙があふれてきそうでした。
そんなとき遠くの席にいたA子が走ってきて、牛乳瓶を拾ってくれました。
勘のいいA子はすぐに私の異変に気づいたようでした。
A子は拾いながら
「先生、言ったの?」
「あ、ああ。ちょっといったほうがいいかなと思って・・・」
「あれだけ言うなっていったじゃん!どっちが勝ったとかどうでもいいの!眞田は間違いなく頑張ったんだから」
私はそれを聞きながら、ずっと言葉を発せず、下を向いてただ立っていました。
一言でもしゃべると、少しでも動くと涙が一気に流れてきそうで、
ただ、ただ、今にもこぼれてきそうな涙をこらえるのに必死でした。
「完敗だ・・・自分はA子に何一つ及ばない。」
心の底からそう思いました。
それから、私の目標は常に「A子に勝つ」となりました。
3年生になってクラスが別々になりましたが、テストのときは結果を見せあっていました。
必然的に私の順位は一段上のレベルで常に保つことができるようになりました。
でも・・・
私は結局3年間で、学校でA子にだけには勝つことができませんでした。
私が「これはいい点数だ。A子にも勝っているはず」そう思ったテストでもA子は常に私の1、2点上にいました。
A子に一度もテストで勝てなかったこと、これは私の中学時代の心残りの一つです。
人間的なレベルはA子と私の間には埋めることのできない大きな差がありましたので、せめて勉強面だけでもA子に勝ちたかった。
これまで色々な方との出会い、経験があったからこそ今の私があるわけですが、A子との出会いは私に大きな影響を与えてくれましたし、この出会いがなければ今の私は存在していませんでした。私はA子のような素晴らしい人間と出会えて本当によかったです。
以上私が勉強に目覚めた出来事の顛末でした。